人工衛星でもよく利用するチタン系のボルトに関してですが、純チタンボルトはWilcoさんあたりで普通に買えますが、いわゆる6-4チタン合金(Ti-6Al-4V = Grade5)ボルトはなかなか高くて手が出しにくいです。純チタンでは、1本200円くらいのボルトが、6-4合金チタンになりますと1本800~1000円と非常に高額です。
人工衛星の各部の締結に、ウチの会社では基本的に普通のステンレス(SUS-XM7 : オーステナイト系(ほぼ非磁性))の六角穴付きキャップボルトを使っています。しかし一部に理由があってチタンボルトを採用しています。チタンボルトといえば、”軽量”というイメージが強いのかなと思います。もちろんネジのM系が大きくなってくると、ステンレスボルトとチタンボルトではだいぶ質量が変わってきて、衛星全体で数百本単位になってくるとボルトだけで随分軽量化ができます。契約にもよりますが衛星のロケット打ち上げ費は衛星質量に起因することも多く、ネジ費用が仮に数倍~数十倍になってもチタンボルト・アルミボルトなどで軽量化をはかることはあります。
軽量化の他には、”断熱”の目的もあります。人工衛星の内部の機器は、バッテリーや各種電気回路などいろいろ搭載されていますが、その取り付けのネジを”断熱のため”にチタン合金ボルトを使う事があります。低軌道の人工衛星は約100分程度で地球を一周しますので、太陽が当たる熱い時と、地球の食に入って(太陽の陰になる)冷える時を100分の内に1サイクルします。1日で地球を15周程度するので、毎日15回も暖まって、冷やされてを衛星は繰り返すわけです。そうなると衛星の表面の壁などは温度の上下を繰り返します。たとえば、その壁の温度の上下とバッテリー温度が連動する場合、一日15回もバッテリーは寒暖を繰り返すわけです。冬になるとスマホやノートPCのバッテリーの持ちが悪くなった経験がないでしょうか?リチウムイオン二次電池などのバッテリーは一般的に低温下で性能が大幅に劣化します(超高温もしかり)。つまりバッテリーとしては、あんまり温度変化がない環境で使うのが長持ちする秘訣なのです。その場合、衛星の表面の壁は、太陽光が直接あたったり、食に入ると一気に放熱面として熱が宇宙空間に逃げてゆきますから温度変化が激しく、バッテリーとは断熱した方が良さそうです。そこで、バッテリーボックスは、衛星の金属の構造(壁)などに直接ペッタリくっつけて取り付けるのではなく、樹脂などの熱が伝わりにくいものを挟んで、更に熱が伝わりにくいボルトで締結し取り付けます。せっかく樹脂などを挟んでもネジが熱が伝わりやすいステンレスなどでつなげてしまうと結構熱が伝わってしまうんですよね。そこで、熱が伝わりにくい”6-4チタン”ボルト(熱伝導率が低い)を使います。純チタンはステンレスと熱の伝わりはあまり変わりませんが、6%のアルミ、4%のバナジウムを含んだ6-4チタン合金ボルトは、”熱が伝り難い”断熱用のボルトとして、宇宙機器では重宝されています。
というわけで、チタン=軽量化だけじゃない使い方もあることを紹介いたしました。よって伝熱などの問題がなく軽量化だけの目的なら入手しやすい純チタンボルトを採用することも十分にあると思います。そうです自転車などの軽量化目的であれば、無理して高価な6-4チタンボルトは本当に必要か一考いただければと思います。ただし純チタンのボルトはテーパーヘッドでないことが多いので、外見なども含めてご検討くださいな。
さて、その6-4チタンをまともに数十本・数百本単位でオーダーすると非常に高額になってしまいます。日本のチタンボルトメーカー(というよりチタン加工メーカー)は非常に優秀ではありますが、今回はフランスのオンラインショップを見つけて、そこで購入してみました。
TITANE SERVICES : http://www.titane-services.eu/
*クレジットカード利用可能
主にモーターバイクマニアターゲットかなと思います。チタンボルトは、
http://www.titane-services.eu/epages/230155.sf/en_GB/?ObjectPath=/Shops/230155/Categories/visserie-titane-tige-filetee-titane/vis-titane-CHCC
このあたりですかね。いろいろ探してみて下さい。M4の6-4チタン(Grade5)が、2ユーロくらいですから、日本の市場価格の1/5~1/10くらいですかね。
さて、人工衛星用を数十本単位でオーダーしたところ、二日で出荷され三日で到着し土日を挟んで(含めて)6日で到着しました。実に早かった。
届いたボルトですが、正確に6%アルミ4%バナジウムかどうかは調べられませんが、見た感じ6-4チタンだと思います。ネジ穴に通してみましたが、するする入るので問題なさそうです。
自転車の各部のネジを少しでも軽量化したい方などはどうぞお試しください。日本の純チタンボルトの値段と、フランスの6-4チタンボルトの値段がほぼ同額なので、後者に行っちゃいますかね・・・。数グラムを軽量化するより前日のご飯を減らした方が楽ですが、自転車の軽量化にそれをいったら試合終了ですし(笑)あくまで趣味ですから、そういうコダワリも良いと思います。(ちなみに私はボルトをチタンにしたことはありませんが、スーレコ利用が多いので、多くの部分がチタンになっているかと思います)
* 今回は衛星の”熱伝導率”の観点から、純チタンと6-4チタン合金の差に関して少し書きましたが、もちろんネジの強度も後者の方が強いです。バイクのブレーキ部などの強度が必要とされている箇所などには、もしかしたら6-4チタンの強度が求められている箇所があるかもしれません。安直に安い純チタンが良いかなど、慎重に調査してみてください。
* また知人からもっと安いメーカーなども教えてもらいました。この記事では、あくまでフランスの業者から買って見た(その業者は種類が豊富で比較的安価だったので)ということで紹介しました。
Hello,
I discovered you told about TITANIUM SERVICES on your blog.
I translated your article with “Google translate” but of course the result is not perfect.
I understood you were satisfied with our service (i hope I understood well 🙂
So thanks for this article.
I hope we will work together again.
If you wish, we can publish some photos of your project on our FACEBOOK page.
Best regards,
Mathias MOREL
TITANIUM SERVICES – France.
Hi Mathias,
Thank you for your comments and your managing to read this articles by ‘Google translate’. 🙂
This article (as you read) describes “6-4-Titan = Grade5 Titanium” bolt for bicycle and artificial satellite (I’m aerospace engineer and developing small-satellites in my own company).
“Made in Japan”-Titan bolt is very expensive around 10 EUR per 1-bolt. Then I searched titanium-bolt factory all over the world via Internet, and I found your company.
Your product is very nice and grade quality. I have already installed your bolts onto my roadbikes and our satellites, which will be launched into space this year.
I hope that this articles can contribute to your sales and Japanese new customers:)
Naoki